部活動支援

インタビュー| 杉並区立小中一貫教育校 高円寺学園

株式会社Sports & Worksは部活動支援事業のモデル校として、杉並区立小中一貫教育校 高円寺学園にて2022年度より取り組んできました。

一年半が経過した今、同事業が学園でどのような効果や成果がでているのか。学園長の田中稔氏に話を聞きました。

――この9月で1年半を過ぎまして、部活動地域移行支援事業(以下、部活動支援)の振り返りや課題を含めて、お話を進めていきます。外部支援にはいろいろな目的がありますが、一つは先生方の働き方改革。先生方と実際にお話をする中では、「スケジュールが楽になった」という話をいただきました。学園長と先生方とのコミュニケーションのなかで、現場の所感を教えて下さい。

田中学園長:まず一つは、教師が授業作りなどの業務に時間をしっかり使えるようになりました。それから、家庭生活を大切にすることができるようになってきた。これは間違いないことだと思っていて、本学園の働き方改革は著しく進んだなと思います。区内の教師方の話を聞く機会がありますが、この事業が入っていないところでは、残業が多い課題が大きいようです。

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田中稔学園長

――人手が足りないとやはり生徒の対応に時間を割かなければならないですよね。

田中学園長:ただ教師というのは、生徒に対して純粋に向き合う仕事ですから、空いている時間があったらその分、生徒のための仕事を増やしていきます。部活ですと所属している生徒たちに対しての時間ですが、部活動支援によって教員はある意味、学園すべての生徒たちのための時間に変わったと考えることもできます。そういった背景があるなかで、この支援の導入によって教員方は帰宅時間であるとか、何よりも休日に出勤する回数っていうのは圧倒的に減りました

――部活動支援によって、先生方に時間の余裕が出て業務にメリハリが出ているようですね。一方で、保護者の声はいかがでしょうか?

田中学園長:当初は「部活は教員がやるべきだ」と、お考えの保護者の方がやはりいらっしゃいました。部活動支援の導入に首をかしげる方がいるのは、事実だと思います。ただ1年経ってコーチの方がとても生徒思いで、おまけにその競技についての高い専門性を持つ方々なので、安心して生徒たちを任せるようになってきました。

さらに、世の中の部活動に対しての考え方というのも、地域移行のことがニュースに出てきて変わりつつあります。ですので、やはり先生がやるべきだっていう意見は、少なくとも私には入ってこないですし、区でやっているアンケートからもこの部活動支援の定着が進んでいるように感じます。

――私達も当初、保護者の反応はとても気にしていました。

田中学園長:元々、その競技について熟知している方が生徒に対して一生懸命指導しているので、とても安心感があります。生徒との関わり方を見ているとSports & Worksさんのコーチは、生徒が勝ちたいっていう願いに対して様々な方法で指導に当たります。

一方で、楽しみたいという思いについては、そういう楽しい指導を心がけていただいているので、生徒のニーズに沿った関わり方をしてくれているのが一番の信頼を得ている材料なのかなと思います。常に生徒に寄り添った助言をしているのを見ていて「うまいな」、と思いますね。そういうのを保護者も家庭で子どもの様子を通してちゃんと見ているのかなと思います。

ですので、この制度の定着の前提には「良いコーチ」「良い指導者」がいることが重要となり、この制度の成功の鍵になるでしょう。話は戻りますが「部活動は教員がやるべきだ」という一種の概念を払拭するには、Sports & Worksさんにやっていただいた、「このコーチはこんなに素晴らしい指導者ですよ」っていう紹介をして、直接保護者の方と話していただき安心していただく。

そして、実際に生徒と関わる中で、例えば別け隔てなく接してくれるとか、部活動では先生ではなくコーチが携わることで、生徒の新たな一面を見られることもあるわけです。そのスポーツの専門家として素敵な方が、部活動に関わることで保護者の方のそのような疑問が払拭されていったのかなと思います。

――ありがとうございます。では、コーチと先生との体制についても教えて下さい。

田中学園長:教員とコーチのコミュニケーションは取れています。これは、この制度の内容に確認や打ち合わせの時間が含まれているからだと思います。単純に、現場だけの時間で区切ってしまうと、双方に距離が空いてしまったのかもしれません。

支援制度はこの大切なコミュニケーションを含んでいる制度ですので、教員とのやり取りはしっかりしているなと思います。また、生徒からの不満も私には入ってきていません。生徒みんなを平等に扱ってくれている事、コーチが勝利至上主義に行かないことが大きな要因だと思っています。スポーツですから勝ちたい、楽しみたいといった気持ちが出てきます。しかしスタンスというのは、生徒たちの意思・意欲がベースにあるので、学校とSports & Worksさんのような指定業者がしっかり話し合って、例え保護者に希望があったとしても、はじめに生徒の意志を尊重した姿勢をご理解いただくのがいいなと思っています。それがこれからの部活動のあり方だと思います。

――最後に、部活動支援についての展望について聞かせてください。

田中学園長:先生方の働き方改革と、生徒の満足度をいかに上げるか、というところは継続した課題です。部活動支援は地域によって柔軟に対応したいわば「フルオーダー型」にできるか、という点が大切になってくると思います。この杉並区でも地域の特徴をくみながら、先生と生徒がより充実した時間を過ごせるようにこの制度がより精錬されることを願っております。